Kompleks Graffiti

音楽、イギリス、哲学等について記していきます。

イギリス留学記 初めてのライブ

 イギリスでの留学を選んだ理由の1つがイギリス文化への興味であり、中でもイギリスの音楽シーンへの憧れがとても強かった。そんな私が初めてイギリスで観たのはバッド・ルーテナントのライブだった。バッド・ルーテナントとは何ぞやとなる方がおられると思われるため、まずどういうバンドなのかを書きたいが、個人的に好きなバンド2つが登場するため長くなる。

 バッド・ルーテナントはバーナードサムナーと言うギターボーカルによって結成されたバンドなのだが彼を語るには2つのバンド、ジョイ・ディヴィジョンJoy Division)とニューオーダーNew Order)の存在は避けて通れない。ジョイ・ディヴィジョンはイアンカーティス(Vo)、バーナードサムナー(Gt)、ピーターフック(Ba)、スティーブモリス(Dr)によって結成されたマンチェスター出身のバンドで、ポストパンクを代表するバンドである。ポストパンクというのは文字どおりパンクムーブメントから派生した音楽群でこれといった音楽的な分類はなされていないようである。このバンドは2ndアルバム収録を終え、アメリカツアーも決定していたなか、イアンカーティスの自殺で突然幕を閉じる。ジョイ・ディヴィジョンはイギリスではカルト的な人気のあるバンドでドキュメンタリー映画も作られているためぜひご覧になっていただきたい。

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 残されたメンバーはバンドを続けることを決心してニュー・オーダーとして再出発した。積極的にシンセサイザーを用いて作られた曲はイギリス国民の心を捉え、その後の音楽シーンに与えた影響は計り知れない。Blue Mondayのドラムのイントロなどはとても印象的である。また1990年のサッカーW杯の際はWorld In Motionという曲がイングランドの公式応援歌となり、大体の応援歌がひどい曲であるなか、公式応援歌にしては珍しくいい曲だったらしい。

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 ニューオーダーは2007年にピーターフックとバーナードサムナーの仲違いにより活動停止。バッドルーテナントはその後2008年にバーナードとニューオーダーのフィルカニンガム(Gt)によって結成された。

 そして私が行ったライブはバッドルーテナントにニューオーダーのドラマーのスティーブ・モリスも加わっている編成だった。これはジョイデヴィジョンとニューオーダーに影響を受けた身としては絶対見に行かねばということでチケットを手にいれたのであった。ライブはマンチェスターのThe Ritzと言う会場で行われた。歴史あるホールでビートルズも演奏したことがあるとのこと。嬉しいことに当時我が家から10分くらいの距離で学校の通り沿いにある。ああなんたる幸せ。

  会場に入りこれといってやることがないので前の方に行こうとするとすんなり行くことができた。みんなお酒を飲んで特に前の方で見るといったことには執着していないようである。そして比較的年齢層は高めであり、どこか余裕が感じられる。ライブの前からニューオーダーコールが巻き起こっていた。ライブをするのはバッドルーテナントだがイギリス人はこういった細かいことは気にしない。全員ニューオーダーの曲が聴きたいのだ。そして何より私もそうだった。失礼だがバッドルーテナントはいいからニューオーダーの曲が聴きたかった。

 ライブが始まると日本に比べて、あまり人が押してくることもなくみんなとにかく歌うことを楽しんでいる印象だった。そして何かとビールを投げる人が多い。やはりイギリスと日本ではライブの楽しみ方が違うなと感じた。日本は良くも悪くも真面目に観て真面目に盛り上がる。イギリス人はライブに対する熱は少し低いが、各々好き好き楽しんでいる感じがある。演奏する側としては日本の方がやりやすいかもしれないがイギリスの方がリアクションが正直であるため、自分の立ち位置がよくわかるのではないかと思った。

 正直に言うとこのライブは何ともスッキリとしないものだった。客はとにかくニューオーダーやジョイディヴィジョンが聴きたいがバンド側としてはバッドルーテナントとしてやりたいというミスマッチが起きていた。なお私はこの後イギリスで2度バンドと観客のミスマッチを見かけることになるがそれは機会があれば後日、記そう。

 そんな少しもやもやした気持ちとイギリスで初めてライブが観られたという感慨に浸りながら帰路についたイギリス初年の秋であった。